新型コロナの影響を乗り越え、ポストコロナに対応するために使える補助金として事業再構築補助金があります。中小企業でも最大6,000万円もの補助金を受け取れるという、過去に類を見ない規模の補助金事業として注目を集めています。ですが、すべての経費が対象となるわけではありません。対象経費と思ってのに実は対象外になってしまう事例もよく見かけます。本記事では、実例を交えた対象経費の紹介と合わせて、検討時の注意点についても解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。
事業再構築補助金とは
新型コロナにより売上が減少し、事業再構築指針に沿った新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援する補助金です。事業再構築補助金は、補助対象経費の適用範囲が広いことでも知られています。
補助対象となる経費について
よく使われる経費として、例えば以下が上げられます。
建物費や外注費、広告宣伝費に加えて幅広く活用できるのが特徴です。建物に関しては、理由書を添えて承認されると、新築の建設もできる内容となっています。※審査に通過する必要がある
- 建物費(建物の建築・改修、建物の撤去、賃貸物件等の原状回復)
- 機械装置・システム構築費(設備、専用ソフトの購入やリース等)、クラウドサービス利用費、運搬費
※リース料は対象だが補助事業期間内に限られる。リースではなく購入も検討する必要。 - 技術導入費(知的財産権導入に要する経費)、知的財産権等関連経費
- 外注費(製品開発に要する加工、設計等)、専門家経費
※応募申請時の事業計画の作成に要する経費は補助対象外。 - 広告宣伝費・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等)
※補助事業に関係のない広告宣伝費は対象外。 - 研修費(教育訓練費、講座受講等)
補助対象外となる主な経費
一方で、事業再構築補助金は補助対象外の経費も定められています。具体的には以下の6つを覚えておくと良いです。例えば、新築費用が許されるので、家賃も対象になると勘違いされる方もいらっしゃいます。ここはよく誤認してしまうため、注意が必要です。
- 事務所等の家賃・保証金・敷金・仲介手数料・水道光熱費
- 通信費
- 原材料費・消耗品費
- 不動産や株式の購入費
- PCやプリンター、スマートフォンなど汎用性があるもの
- 人件費・旅費
補助金を検討する際の注意点
また、事業再構築補助金にかかわらず、補助金全般の注意点として以下が挙げられるます。一番気を付けたいのは、採択されたとしても、必ず補助を受けられるとは限らない点です。以下、3つの注意点には特にご注意ください。
1. 実施期間内に銀行振り込みでの支払いが必要
補助を受けるには、補助事業実施期間内に支払った経費が対象です。補助金の交付が決定する前に発生した経費は対象となりません。
しかし、新型コロナウィルスの影響の長期化により、事業に支障をきたすことを考慮し、事前着手申請が可能です。この申請により承認を受けた場合は、令和3年12月20日以降に発生した対象経費を、実施期間外であっても補助対象とすることができます。
また、経費の支払いは銀行振り込みの実績で確認するため、その他の支払方法では補助を受けることができません。手形などで支払った場合は、実績確認ができないので注意が必要です。
2. 対象経費全額に補助があるわけではない
事業再構築補助金には補助金額や補助率が設定されているため、経費の全額が対象とはなりません。
通常枠での申請であれば、従業員数によって100万~8,000万円の補助金額が設定されます。また、補助率においても中小企業者等は3分の2(6,000万円を超える場合は2分の1)、中堅企業等であれば2分の1(4,000万円を超える場合は3分の1)のように補助率が定められています。
例えば中小企業が補助金額3,000万円のケースを考えると、補助率は3分の2であるため、2,000万円の補助金を受け取ることが可能です。もし、全額の補助が受けられると認識していると、経営に影響が出てしまうので気を付けましょう。
この補助率は申請する事業類型によって異なるため、申請時に確認しておくと安心です。
3. 50万円以上の経費には相見積もりが必要
経済性の観点から、発注先1件につき税別で50万円以上の経費が発生する際には、相見積もりを取らなくてはいけません。もし、相見積もりを取っていなかったり、最安値の発注先を選定していなかったりすると、理由書の提出や価格の妥当性を示すことが必要となります。事前に50万円以上の経費となりそうな場合には、見積書を用意しておくと、スムーズに補助を受けることが可能です。
事業再構築補助金の活用事例
実際にどのようなケースにおいて、事業再構築補助金が採択されたのでしょうか。
具体的な事例とともに紹介していきます。
1. M&A仲介からM&Aプラットフォームへ転換
M&A仲介を行っていた企業が、オンラインで完結できるM&Aプラットフォーム事業へ転換した例があります。
この事業転換において発生する経費は、新たなプラットフォームを構築するためのシステム構築費や、完成後に係る広告宣伝費などです。
この事業転換においてPCの購入費用を申請しても、汎用性がある経費のため、補助対象外となってしまいます。
参考;参考:https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/cases/01_jigyokeikaku_09.pdf
2. 観光ホテルにワーケーション施設の増設
コロナ禍で観光需要の激減に対応するため、ワーケーション客の獲得を狙う目的でコワーキングスペースを併設した施設を増設する例も採択されました。
このケースにおいては、施設を増設するための建物費などが経費として考えられます。
参考:https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/cases/01_jigyokeikaku_04.pdf
まとめ
事業再構築補助金の対象経費を把握するためには、どの区分が対象となるかを知ることが大切です。それに加えて実施期間や補助金額を確認すること、採択された事業に即した経費であることで、補助対象外とならずに支払いを受けられます。事業再構築補助金を正しく理解し、うまく利用していきましょう。