【最新】事業再構築補助金「緊急対策枠」の概要から補助額や使える経費の活用方法

経産省が主体となる事業再構築補助金で、第7次から新たに「緊急対策枠」が設けられました。2022年度から急速に進む円安の影響により物価や原油の価格高騰の影響を受けた企業は少なくありません。本記事では、その影響を受けた事業者の方々が「緊急対策枠」を活用して事業再構築を図れるよう、必要な情報を網羅的に解説します。

事業再構築補助金「緊急対策枠」の新設背景

緊急対策枠は第7回の公募から新設されました。その背景には、様々な経済的因子がかかわっているが、世界的にみると大きく2つが関係している。その2つについて大まかに説明させていただく。

ロシアのウクライナ進行

まず、両国が生産する原油や穀物の供給が滞るとの不安が世界的に高まり、価格が高騰している。そしてその波が日本にも押し寄せている。また、一大産油国であるロシアへの経済制裁により、供給が行われなくなることへの警戒感(供給への不安)も関係する。

急速に進んだ円安

そして次に急速に進んだ円安だ。日本が輸入に頼るモノの価格は、円の価値が下がると支払いにより多くの円が必要になり、割高になる。円安加速の最大の理由は、日米の中央銀行の金融政策の違いが関係している。米国の中央銀国である連邦準備制度理事会(FRB)が積極的に米国内の金利を上げる一方、日銀は未だ金融緩和の姿勢を続けている。そのため、ドル買円売りの動きが外国為替市場を中心に強まった。その結果、2022年3月以降、対ドルで20円以上も円安が進んでいる。

物価高の影響を受けた事業者は優遇措置が設けられる

上記の背景から第6回の公募時点で、原油価格や物価高騰の影響を受けた事業者には加点措置が施され、優先的に採択される仕組みへと変更されました。そして、事態を重くみたい経産省は、第7回公募からは新たに緊急対策枠を設けることになりました。

緊急対策枠の詳細

原油価格・物価高騰等緊急対策枠(以下、緊急対策枠)は、原油価格物価高騰等の予期せぬ経済環境の変化の影響を受けている事業者に対する支援として、事業再構築補助金第7回から追加されました。

第6回公募において加点措置が施されていた要件は、緊急対策枠要件です。その要件も含めて、ひとつずつ見ていきましょう。

大前提となる事業再構築補助金の要件

事業再構築補助金の支援対象を明確にするため、経済産業省は事業再構築の定義を「事業再構築指針」に定めています。これを基に事業再構築に当てはまる事業であることが要件です。

それぞれの類型は以下の通りです。

  • 新分野展開:主たる業種や事業を変更せず、新たな製品等により新たな市場へ進出すること
  • 事業転換:新たな製品等によって、主たる業種を変更せずに主たる事業を変更すること
  • 業種転換:新たな製品等によって、主たる業種を変更すること
  • 業態転換:製品等の製造方法や提供方法を相当程度変更すること
  • 事業再編:会社法上の組織再編行為を補助事業開始後に行い、上記4つのいずれかを行うこと

以上5つの事業再構築に該当する場合、事業再構築要件を満たします

参考:https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/pdf/shishin_tebiki.pdf

緊急対策枠の要件

緊急対策枠の要件は以下の通りです。

原油価格上昇または物価高騰の影響により、売上や付加価値額が一定以上の減少が要件です。具体的には、2022年1月以降の売上高が2019~2021年同月と比べて10%以上減少(付加価値額の場合は15%以上)していることです。また、コロナの影響を受けたことも申請時に申告しなくてはいけませんので注意が必要です。

認定支援機関の要件

事業再構築補助金で提出する事業計画書は認定支援機関と策定しなければいけません。認定支援機関とは、経済産業省が認めた中小企業を支援する機関です。そして、策定後に確認書を添えて提出する必要があります。確認書とは、事業計画書に必要な支援を提供する内容の書類です。審査には、合理的で説得力のある事業である必要があるため、上記の要件が設けられています。

3,000万円を超える場合は金融機関

ただし、補助経費額が3,000万円を超える場合は、金融機関からの確認書が必須です。一般的に補助経費額が大きな事業ほど、資金面のリスクは増えます。そのため、計画策定段階で金融機関から確認しておくことで、事業の妥当性を証明できるということです。金融機関は取引先など任意で選択いただいて構いません。

付加価値額の要件

事業計画書において、補助事業終了後3~5年で付加価値額または従業員一人あたり付加価値額の年率平均が3%以上増加する見込みであることが必要です。付加価値額とは営業利益、人件費、減価償却費を足したものを指します。また、この付加価値額3%以上増加に対する比較基準となる額は、補助事業が終了した月が属する決算年度となります。

以上の4つの要件すべてを満たす場合、緊急対策枠に申請することが可能です。

緊急対策枠の補助額と補助率

緊急対策枠の補助額補助金額は最大4,000万円、補助率は中小企業で3/4、中堅企業で2/3とです。補助率は従業員数に応じて、以下の通り決定されます。

緊急対策枠申請時の注意点

緊急対策枠の申請要件を満たすからという考えのみで申請してしまうと、採択されなかったり、採択までに時間がかかったりすることがあります。ここでは申請時の注意点を3点、解説します。

2度目の採択は不可

過去の公募で採択されていると、再度申請することができません。しかし、過去に採択された事業を辞退した場合は申請が可能です。また、緊急対策枠ではなく、グリーン成長枠に関しては2回を限度として過去に補助を受けたことがある事業者でも申請することができます。

別途申請書類が必要

緊急対策枠として申請するためには、通常の提出書類に加えて「足許で原油価格・物価高騰等の経済環境の変化の影響を受けていることの宣誓書」という書類も提出しなくてはいけません。この書類は売上高が減少しているときと、付加価値額が減少しているときで書類が異なりますので確認が必要です。

主な入力内容は、原油価格・物価高騰で受けている影響と、過去と現在の売上高や付加価値額を入力して減少率を明示することです。こちらの書類は中小企業庁の電子申請用資料からダウンロードできます。

通常枠では対象外でも緊急対策枠では対象になることも

事業再構築補助金は、新型コロナウィルスの影響を受けて事業転換等を図る企業を支援する目的であるため、通常枠で申請するさいはコロナ前の売上高と比較する必要があります。そのため、2021年以降に創業した事業者は対象となりません。

しかし、緊急対策枠においては原油価格・物価高騰の影響によって2021年と2022年の売上高を比較して要件を満たす事業者は補助対象となる可能性があります。もし2021年に創業し、緊急対策要件を満たしているならば、確認してみましょう。

緊急対策枠を検討すべき事業者例

緊急対策枠は原油価格・物価高騰の影響を受けた事業を幅広く支援する枠です。実際に補助を受けるにはどのようなケースが考えられるのでしょうか。

飲食店事業者(海鮮丼レストラン)

例えば、これまで店舗で提供する食材の仕入れをロシア産に頼ってきた事業者では、サーモンやウニの仕入れ価格が2022年2月と比べて20%値上げしている。また一般的な飲食店の場合でも、原油高の影響で電気代が上がったり、小麦粉や油の価格高騰で原材料の物価高に繋がり、売上が減少したケースは緊急対策枠の活用から検討しても良いでしょう。

建設事業者

また、原油価格の上昇により現場で使用するプラスチック資材の価格が15%~20%上昇した事例もよく見られます。プラスチック資材は消費量も多く、調達コストの負担による売上減少に繋がる場合があります。この場合も、緊急対策枠の要件に当てはまっていないか確認してみましょう。

参考:緊急対策枠の要件

まとめ

緊急対策枠の要点をまとめると以下です。

  • コロナの影響に加え、原油価格・物価高騰等の経済環境の変化の影響を受けたことによる売上減少が要件
  • 補助上限金額は通常枠より小さい(従業員数6~20人の場合のみ、通常枠と同じ)
  • 補助率は通常枠より大きい(但し、通常枠と同じ補助率が適用される金額帯もある)
  • 緊急対策枠で不採択となった場合、希望する事業者は通常枠で再審査を受けることが可能

コロナ後の需要拡大やサプライチェーンの乱れ、今年に入ってからのロシア・ウクライナ問題で原油価格・物価高騰の話題が尽きません。日本国内でも、相次いで値上げのニュースが取り上げられています。それほど企業も苦しい状況であるということです。

本記事で解説してきた緊急対策枠は、そのような企業にとって有効な補助金です。各要件をしっかりと理解し、当てはまる際には確実に申請しておきましょう。

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