2022年10月、新型コロナ関連の倒産社数は4,200件に上っています。とりわけ、飲食業は全体の15%(627件社)に相当し、最も深刻な影響を受けている業界です。外食需要の減少だけでなく、円安や原油価格の高騰等がより経営を圧迫している状況です。
そんな苦しい経済状況に立たされる飲食店だからこそ!事業再構築補助金の活用が不可欠だと考えています。そこで本記事では、実際の事業再構築補助金における飲食店の採択事例を紹介します。加えて、採択の秘訣についても解説いたします。ぜひ最後までお読みください。
第6回公募の採択結果
まず、第6回公募の全体の採択結果ですが、総応募15,340件に対して採択7,669件と平均採択率50%でした。とりわけ、回復・再生応援枠と最低賃金枠の採択率は高く、それぞれの平均は回復・再生応援枠65%、最低賃金枠85%です。他方、通常枠は45%になりました。
この採択率は過去5回を含めても最大の採択率です。←ファクトが欲しいです
業種別の応募と採択割合をみると「宿泊業・飲食サービス業」がともに全体における2番目の多さとなっています。
全体的に幅広い業種の応募や採択がありますが「宿泊業・飲食サービス業」は応募割合に対して採択割合の方が高い割合を占めているため、比較的採択されやすい業種であるといえます。
参考:https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/result/koubo_kekka_gaiyou06.pdf
飲食業の採択事例
事業再構築補助金を受けるには、ポストコロナを乗り切るために事業再構築指針に当てはまる事業計画を立てないといけません。以下、事業再構築に当てはまる実際の採択事例を紹介します。
新分野展開
新分野展開は業種や事業を変えず、新たな製品開発によって、新市場に進出する必要があります。そのため、過去に製造していた製品の再製造は要件を満たしません。
新分野展開における飲食業の採択事例は、滞在型の飲食店からテイクアウト店舗へ新分野展開した事例です。
外出自粛や休業・時短要請によって客足が減り、滞在型の売上が激減した飲食店が北海道にありました。新たな製品として製菓衛生師監修の北海道産原料を使用したチーズケーキをテイクアウトで販売する業態への展開です。
事業転換
事業転換は、新たな製品等によって業種を変更せずに、事業を変更することです。
会食の自粛によりアルコールの提供をしている駅前立地の居酒屋が事業転換した事例が当てはまります。三密を避けるために、店内の滞在時間減少とテイクアウトやデリバリーニーズが拡大しました。それを受けて、居酒屋からロードサイド型の本場札幌ラーメン店へ事業転換を図った事例です。
業種転換
業態転換は新たな製品等によって、業種を変更することです。
飲食業から小売業へ業種転換した事例が採択されています。
こちらも他の事例と同様、外食需要の減少により、駅前カフェの売上が激減しました。企業の存続を掛けるため、大手洋菓子店のフランチャイズに加盟し、小売業へ業種を変更して業績回復を目指しました。
業態転換
業態転換は、製品等の製造方法を相当程度変更することが必要です。新分野展開と同じで、過去に同じ方法で製造していた実績がないことも条件となっています。製造方法に合わせて、主要な設備の変更も必要です。
業態転換では、従来の強みを活かして、新たな業態を開始した事例があります。
コロナ前までは居酒屋をチェーン展開していた飲食店でした。しかし、売上が減少したことにより、強みであった埼玉県のブランド牛である「深谷牛」など地産地消にこだわったメニューを活用して、初の焼肉店を展開しました。強力な排煙・換気設備も整えたことで、コロナ禍でも集客できる体制をとっています。
補助対象の経費
事業再構築補助金には対象の経費が定められています。そのなかでも、よく使われる経費は以下のとおりです。
- 建物費(建物の建築・改修、建物の撤去、賃貸物件等の原状回復)
- 機械装置・システム構築費(設備、専用ソフトの購入やリース等)、クラウドサービス利用費、運搬費
※リース料は対象だが補助事業期間内に限られる。リースではなく購入も検討する必要。 - 技術導入費(知的財産権導入に要する経費)、知的財産権等関連経費
- 外注費(製品開発に要する加工、設計等)、専門家経費
※応募申請時の事業計画の作成に要する経費は補助対象外。 - 広告宣伝費・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等)
※補助事業に関係のない広告宣伝費は対象外。 - 研修費(教育訓練費、講座受講等)
飲食業で考えると、新たな商品を造るための機材導入費用や、新たな業態を宣伝するための広告宣伝費や販売促進費などが考えられます。
詳しくは以下の記事でも解説していますので、ご参照ください。
採択されるためのコツ
このサイトをご覧になっている人には、過去に応募したが採択されなかった経験がある人もいるのではないでしょうか。そのような人も、これから申請する人も採択される確率が上がる方法を2点、紹介します。
加点項目を確認する
事業再構築補助金には公募回によって、採択されやすくなるための加点項目が設定されています。
第7回においては、大きく売り上げが減少している事業者へ対する加点がありました。
具体的には、2021年10月以降のいずれかの月の売上が2020年または2019年同月比で30%以上(付加価値額に関しては45%以上)減少していることです。
また、最低賃金枠に申請すると、それだけで加点要素となりました。最低賃金枠とは、最低賃金引き上げによって、その原資確保が困難な事業者が申請する枠です。
その他、経済産業省が行うEBPMの取り組みに協力することによる加点や、特定事業者であり中小企業者でない者に対する加点などが第7回において定められていました。 加点の条件は公募回によって変わる可能性があります。加点の申請時に追加で提出する書類が発生することもありますので、申請するときは必ず確認しましょう。
不採択理由を問い合わせる
もし事業再構築補助金の申請をして不採択となってしまったら、必ず事業再構築補助金事務局へ不採択理由を問い合わせましょう。
こちらの事務局へ問い合わせると、不採択理由を教えてくれます。次回の申請に向けて、修正するべき点を把握しておくことが必要です。
まとめ
飲食業に関する事業再構築補助金の抑えておくべきポイントは以下です。
- 宿泊業・飲食サービス業は全体でみても2番目の申請と採択の多さ
- 他の業種と比較すると採択率は高め
- 事業再構築に当てはまる要件において幅広く採用されている
- 採択されやすくするために加点要素の確認が必要
- 不採択になっても不採択理由を問い合わせて次回に備える
外食需要は戻ってきたものの、サプライチェーンの乱れや原料費の高騰で苦しい状況が続いている飲食業界です。商品の値上げに関するニュースが絶えない状況ですが、今回のポイントを押さえてポストコロナに負けない事業転換を図り、事業再構築補助金を有効に活用していきましょう。